森田ゆり著『子どもへの性的虐待』を読みました。

森田ゆり著『子どもへの性的虐待』(岩波新書)を読みました。

性犯罪、司法面接に関心がわいたため読んでみました。

(ここに感想として書かれていることは、正直、自分の考えとは異なる部分が多いです。ですが、どの様なことが書かれていたのか、どの様な論理の部分に関心を持ったのかをまとめているので、そこはご容赦ください。)

 

 この本は、子供への性的虐待の背景に何があるのか、子供への性的虐待があった場合に子供に何があるのか、子供をどのように救っていくのか、救う際の障害は何かということをまとめた本です。

 興味深かった点として、子供への性的虐待が発生する要因として、①加害の動機が存在すること、②内的抑止力が働いていないこと、③外的抑止力が働いていないこと、④子供の抵抗がないことが挙げられています。そして、これらというものは、男性の社会化、男女不平等が根底にあると考えている点が挙げられます。

 というのも、「性犯罪が起こるのは、男性社会が原因だ」とはよく聞くのですが、これだけをスローガン的に言われるのでは意味が分からなかったためです。しかし、この本を読んで、性犯罪が起こるのは、例えば、社会に児童ポルノがあふれており児童に対する性犯罪を認める風潮があること、男性にとって女性と性的関係を持つことがアイデンティティの確立につながることを認める社会になっているため、男性が弱い児童に性行為を強いるようになっているなどという意味であることがよくわかりました。

 ほかに興味深かった点として、性的虐待が疑われる被害者に対して、「過誤記憶であり、性被害はなかった」と言ってしまうことによる二次的被害の問題が挙げられていた点です。

 というのも、「二次被害」といわれるものがよくわからなかったためです。二次被害というものは性的虐待で傷ついている被害者に「被害はない」と述べることによって、自分の被害は社会的に認められない救済されないと思わせ、トラウマとして心に傷を負わせるということが「二次被害」ということであることがよくわかりました。

 また、過誤記憶であると認定することは、性虐待を受けた人を沈黙させたり、性的虐待の隠ぺいにつながるため、性的虐待を受けた被害者の側に立った判断が必要であるということも新たな観点を与えてくれる見解でした。

 個人的には、この本に書かれていることの多くはは自分の考え方と相いれない部分は多いのですが、少なくとも、性被害が「あった」として語らせることの効用、ケアの必要性、救済の障害が現状では多いということは学びになりました。