ロープラクティス商法問題21

非公開会社についての新株発行無効の訴えに関する問題です。

(私が解いているのは第3版の問題です)

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.Xは本件新株発行について招集手続きが取られることも株主総会が開かれることもなかったことを理由として、会社法828条1項2号に基づいて新株発行無効の訴えを提起することができるか検討する。

 会社法828条1項2号によれば、非公開会社であれば1年以内に新株発行無効の訴えを提起することができると規定されているものの、どの様な事由があれば訴訟を提起できるか規定されていない。しかし、新株発行が無効になると会社株主に重大な影響を与えることから、新株発行差し止めの訴えに出ることができないほど重大な違法事由があれば無効の訴えを提起することができると解されている。

 本件事案において、Xは株主総会の招集手続きを経ることなく新株発行を行うことによって、会社法299条1項の規定に反した新株発行を行っただけでなく、臨時株主総会の開催も行っていないことから、会社法199条2項に反した新株の発行を行っているということができる。

 このようにXを含めた株主に対して新株発行差し止めの機会を与えることのないような新株の発行を行っていることから、このY社の新株発行は新株発行の差し止めの機会を与えないほど重大な違法事由が存在したということができる。

 さらに、Xは違法な新株発行の行われた平成28年6月から9か月後の平成29年3月に新株発行無効の訴えを提起していることから、会社法828条1項2号かっこ書きに規定される通り提訴期間内に訴えを提起しているということができる。

2.したがって、Xは会社法828条1項2号に基づいて新株発行無効の訴えを提起することができるといえる。